もし「共謀罪」が成立したら、私たちはどうなるか【全国民必読】
現代ビジネス もし「共謀罪」が成立したら、私たちはどうなるか【全国民必読】
京都大学大学院教授・高山 佳奈子さん
以下、要約。
■共謀罪の危険性
○法案審議の進行状況
2017年3月21日に共謀罪法案が閣議決定され、国会に提出。
4月6日午後の衆院本会議で審議入り。
与党は5月中の成立を目指している。
○共謀罪って?
共謀罪とは、犯罪の未遂や予備よりも前の計画段階で処罰の対象とする。
政府は、本法案を「テロ等準備罪」を処罰するものだとするが、法案の中には、テロのための条文は1ヵ条も存在していない。
適用対象の条項に「テロリズム集団その他」が付け加えられたが、テロが除外されないことが示されているだけ。労働組合や市民団体、同人サークルまでもが対象となる可能性は否定できない。
○「オリンピック開催に必要」という大嘘
東京オリンピック開催が決まった2013年までの間に、
政府の犯罪対策計画においてオリンピックのための共謀罪立法が論じられたことはない。
共謀罪立法がテロ対策の一環として位置づけられたこともない。
○問題点
・適用対象に限定がない
「組織的犯罪集団」には認定や指定が不要、
過去に違法行為をなしたことや、過去に継続して存在していたことも不要。
定義が事前になされているわけではなく、構成員の属性も限定されていない。
当初、与党議員らは、一般人は適用対象にならない旨を述べていたが、その後、法務大臣はこれを撤回。
事実、法案にはそのような限定は書かれていない。
組織的犯罪処罰法に関する最高裁判所の判例も、限定を否定。
・犯罪の合意
犯罪を行う計画についての「合意」は、法案上限定されていない。
暗黙の了解や、ツイッターやフェイスブックなどSNSのやり取りが「合意」とされる場合もある。
犯罪が確実に実行されることの認識も必要ない。
*筆者注*すなわち、「犯罪を犯す可能性がある」と捜査当局が決めつければ、摘発対象となる。
・犯罪の準備行為
「準備行為」は、「その他」の文言があるため、同じく無限定である。
予備罪や抽象的危険犯の処罰に必要だとされる実質的な危険が要件となっていないことから、危険性のない日常的な行為がすべて含まれることになる。
*筆者注*
例:
ATMにお金を下ろしに行く→「犯罪のための資金調達かも知れない」として”解釈”される可能性
■なぜ強引に成立を目指すのか?→警察の実績づくりのための処罰
・犯罪認知件数の減少
近年の犯罪統計によれば、犯罪認知件数は激減、戦後最低新記録を更新中。
暴力団関係者の数とそれによる犯罪も大きく落ち込んでいる。
・仕事がない警察が新たに犯罪を増やす!
近年、何の違法性も帯びていない行為の冤罪事件や、極めて軽微な違法行為を口実とした大幅な人権剥奪が現に起こっている。
例
・クラブNOON事件:単にフロアで音楽を流していただけで、深夜営業もしていなければ未成年者もおらず、騒音やごみ、いわんや暴行・傷害や違法薬物の問題も全く生じていなかったが、改正前風営法のダンス営業規制により訴追された。
最高裁は、クラブには表現の自由と営業の自由が及んでおり、社会に対する実質的な危険がなければ無許可営業罪の処罰対象にはならないとして、無罪の判断を下した。
・女性タレント2名が電車の線路に立ち入った行為:鉄道営業法違反で書類送検の対象に。極めて軽微な違法性しかない。刑事罰の対象とはされない国も多い。
・2016年5月、右翼団体「草莽崛起(そうもうくっき)の会」メンバー20名が、道路交通法上の共同危険行為を理由に、運転免許の取消処分。
(*筆者注*
山城博治さんら、沖縄反基地闘争に参加する人々への逮捕・不当な長期勾留も極めて深刻な人権弾圧である)
現行法の下でもこの状態であるから、いわんや、共謀罪処罰が導入されれば、取締権限がどのように用いられるかは、一般人の予測しうるところではないことが明らかである。
イスラム過激派などによるテロを警戒するのであれば、現にテロが起こっているところで用いられているアラビア語、ベンガル語、ウルドゥー語などがわからなければテロの計画を察知できないと思われるが、日本の捜査機関は、摘発が可能な態勢にはおよそない。
テロリストでない日本人しか、実質的には共謀罪処罰のターゲットにならないのである。
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