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福島第一原発にたまり続けるトリチウム水について、政府は10月27日に関係閣僚会議を開き、
「海洋放出」による処分を正式に決定する方針でしたが、農林水産などの関係団体との調整に時間がかかっていることなどから、来月以降に延期となりました。
汚染水の海洋放出をめぐっては、福島県内の市町村議会などが、海洋放出への反対や陸上保管の継続などを求める意見書・決議を相次いで可決しています。
また、福島県農業協同組合中央会や全国漁業協同組合連合会などの団体も反対を表明しています。
2011年3月に世界最悪の大事故を起こした福島第一原発では、今もなお溶け落ちた核燃料を水で冷却しながら、辛うじて持ちこたえています。
この冷却に使用した大量の水はALPS(多核種除去設備)によって放射性物質を除去され、原発敷地内の貯蔵タンクに保管されています。
このタンクは2020年末までに約137万m³までの増設を行う計画ですが、東京電力の説明では2022年夏頃にはタンクが満杯になる見通しです。このため政府、東電は海洋放出を目論んでいるのです。
しかしこの「ALPS処理水」にはトリチウム(三重水素)以外にも放射性ヨウ素や放射性ストロンチウムなど多数の放射性物質を含まれています。現在の除去装置ALPSは万能ではなくて、多数の核種を除去できないからです。
なかでも注目すべきは、ヨウ素129で、これは半減期1570万年という非常に寿命の長い放射性物質です。これが海洋に投棄されれば、沿岸に生息するワカメは放射性ワカメになってしまいます。
また、放射性ストロンチウムはカルシウム成分に混入するものですから、あらゆる魚種に影響を及ぼします。ストロンチウムの影響は今後300年続きます。漁業者たちが海洋投棄に強く反対しているのは、充分な理由があるのです。
またトリチウムは半減期が約12年で、ベータ線は体内で約0.01ミリの距離しか届きませんが、トリチウムは水素として細胞に取り込まれて内部被曝させます。体内の有機物と結合して有機結合型トリチウムになり、排泄が遅くなり、体内に長くとどまります。また、水素として取り込まれたトリチウムがヘリウムに変わればDNAの二重らせん構造水素結合力も失われます。
このため、低濃度でも人間のリンパ球に染色体異常を起こすと、1974年の日本放射線影響学会で報告されています。ドイツでも原発周辺のがんと白血病の調査をして、子どもに影響があると結果が出ています。
カナダでもトリチウムを大量に排出する重水炉型原発の周辺で小児白血病の増加、新生児死亡の増加、ダウン症などの健康被害が報告されました。トリチウムは脂肪組織での残留時間が長いため、米国でも原発立地地域では乳がんが多数報告されています。
日本でも全国一トリチウム放出量が多い佐賀県の玄海原発の稼働後に、白血病死亡率が高まりました。北海道でも泊原発のある泊村は原発稼働後数年して、がん死亡率が道内市区町村でトップになりました。加圧水型原子炉はトリチウムの排出量が多いからです。
また、トリチウムの排出規制基準も日本は異常に緩く、日本の飲料水基準は1リットル当たり6万ベクレルです。これは日本で最初に稼働した福島第1原発が年間20兆ベクレルのトリチウムを排出していたことから、国は放出基準を22兆ベクレルとしました。それが理由で、医学的な根拠はまったくありません。ちなみにWHO(世界保健機関)が1万ベクレルで、米国が740ベクレルです。
トリチウムは食物連鎖で次々に生物濃縮します。動物実験で母乳を通して子どもに残留することも報告されています。処理コストが安いからといって海洋放出することは人類に対する緩慢な殺人です。
福島第一原発の汚染水の海洋放出を絶対に認めてはなりません。
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